Running Column

2018 / 11 / 30

[インタビュー] 自信は勝つための「道具」。結果を出す「自信」の持ち方 – 陸上長距離選手 藤原新選手×監督 花田勝彦(前編)

腕試しから、フルマラソンで世界をめざすまで

花田:藤原新選手は、ロンドンオリンピックマラソンの日本代表として活躍したり、東京マラソンを2時間7分台で走ったりと、私自身、衝撃的な印象が残っている選手の1人です。もともと陸上を始めたきっかけは何ですか?

藤原:僕は長崎出身なんですが、当時の長崎の強豪校は3、4校くらいで、5000mが14分台の選手が県に5~6人くらいでした。小学校、中学校の頃は、校内ロードレースや町内ロードレースとかそういう場面において、井の中の蛙で強かったので、ちょっと腕試ししてみようかと思い、長崎で陸上に強い諫早高校に入ったのがきっかけです。僕は高校時代は同世代の陸上選手に比べて中の上ぐらいでしたが、スタミナにおいて、例えば1500 mより3000 m、3000 mより5000 m、5000 mより10000 mが強いと自負していました。ただ、まだマラソンをやる時期ではないし、今は彼らに負けているけど、いずれそのマラソンまで距離を伸ばした時に絶対俺の方が強いんだっていう気持ちをずっと持っていました。その気持ちが、マラソンに繋がるきっかけになったと思っています。

花田:大学卒業後はJR東日本に入り、2008年の東京マラソンが2回目のフルマラソンで2時間8分40秒で日本人トップの2位でゴール。これが実際に世界を目指すきっかけにもなったと思います。そのときはどのような練習をしたのでしょうか?

藤原:2008年の東京マラソンは完璧からほど遠い状態でした。それなりに完璧な練習だったかもしれないけど、これと言うセオリーからはかなりかけ離れた状態で臨みました。その時はとにかくやっぱり色々と自分で実験してみました。

花田:どういう実験をしたんですか?

藤原:一つは、スピードを重視しました。例えば、フルマラソンのスタート後にいきなり5000 m のレースに変更しますっていうのは絶対にありえないけど、仮にそうなった時に、だいたい13分50秒ぐらいで走れる体調に仕上げる。それくらいスピードのキレを持ってレースに挑みました。
それともう一つ、ディフェンディングチャンピオンの気持ちになって練習に取り組んだということです。その東京マラソンは第2回目で、第1回目の優勝者はダニエル・ジェンガ選手で2時間9分半ぐらい。僕としては完全な挑戦者でした。挑戦者というのは、「積極的に走ったら負けたけど、積極的だからOK」、「いいチャレンジしたからOK」と、ある意味、気が楽という意味では大きなメリットでもあるんだけど、どこか自分で負けたときの言い訳にしている部分があると感じました。じゃあどうしようかと思って、ディフェンディングチャンピオンの気持ちになろうと考えました。「ダニエル・ジェンガ選手だったらどう考えるんだろう?」と、練習の時にずっと頭の中において練習していました。そうすると勝つのが当たり前というメンタルになってくるし、それがやっぱり練習に反映されて、そういうメンタル状態じゃないと逆に言えばそのやるべき練習が見えてこない。 面白い発想法だなと今でも思います。

“謙虚さは捨てた方がいい” 思い込みでも「自信」を持つべき理由

花田:面白い発想ですね。ダニエル・ジェンガ選手のメンタルでやっていこうと思ったのは、レースのどれくらい前からですか?

藤原:だいたい本番の1ヶ月半前からです。

花田:そこまである程度、練習を積むことが出来たから、レースに向かうときは、勝つぞという気持ちになったんですね。

藤原:そそうですね。思い込みは結構重要で謙虚さは捨てたほうが良い。レース前に「調子いいですか?」と言われたら、「調子にいいに決まってんじゃん!」と怒り出すくらい思い込んで良いと思います。

花田:基本、試合に出るときは大体そう言ってますもんね。そういうモチベーションで行くのは大事ですよね。

藤原:そうですね。あと、やっぱり自信というのは一つの積み重ねでもあるんだけど、それは「こういう練習をやりました、だから自信があります。」という自信に練習という根拠があるということです。しかし逆に言えば根拠があるんなら自信があってもなくても勝てるじゃんとなります。だけど、自信はその先に行くために必要で、仮にこのくらいの練習ができなかったとしても、自信さえあれば勝てるときは勝てるんですね。
それはどうしたらいいかというと、「思い込み」。自信がないんだったら今あるようにすればいい。つまり自信は積み重ねではなくて「道具」と思うことです。だから自信があったほうが勝てるのなら今から持てばいいと思います。

花田:そういう考え方は昔から持っていたんですか?

藤原:それは勉強した部分もありますけど、結構前から持っていたと思います。というのは僕は小学生の頃にソフトボールをやっていて、ショートを守っていたのですが、僕の連続エラーで負けたことがあるのです。弱小チームで数少ない勝つチャンスだったのですけれど、その時僕が思っていたことは、「頼むから飛んでくるな。頼むから飛んでくるな。」だったのです。 それで、これはどうにかしないといけないなと自分で思ったので、メンタル的なことをいじり出したのはその時が最初だと思います。やっぱり、「飛んでくるな。」と思ったら必ず飛んでくるのです(笑)それで必ずエラーをするのです。

花田:私も小学3年生のとき、6年生の兄貴がキャプテンだったのですが、いきなりライトを守らされて。試合の時「飛んでくるな」と思っていたのに飛んできて、エラーして負けました。そういうことってありますよね。それはやっぱり自信、思い込み、勝つ気持ちでレースを考えるということは凄く大事ですよね。

藤原:“これをやったから勝つ”のではなくて、“勝つのだったらこれをやる”、という逆算発想ですね。それが僕は大事だと思います。

 

中編へつづく